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銀行の個人向けローンの今後

銀行の個人向け無担保ローンは約4兆円、融資総額の1%といわれています。銀行は、これまで何度か個人向け無担保ローンの市場に参入してきましたが、ほとんど利益を生まなかったといわれています。これは、借り手の生活実態などを調査することなく、源泉徴収票、決算書などの書面のみから貸し出しを行い、その結果貸し倒れになることが多かったからだといわれています。三菱東京UFJ銀行がアコムを、三井住友銀行がプロミスを傘下に置いたのは、過去多くの利益をあげていた消費者金融のノウハウを得るためともいわれております。では、銀行の個人向けローンは今後どうなるのでし。ようか。

この点は、総量規制実施後の動向を注意深く見守る必要がありますが、考えるポイントは、貸金業者が縮小していくなかで、小口の資金需要をだれが賄うのか、また、そもそも賄う必要があるのか、賄う必要があったとして賄うことができるのかという点です。小口の資金需要をだれが賄うのかという点については、貸金業者以外に融資ができるのは、銀行等の民間の金融機関か政府系の金融機関ですから、こういった金融機関が賄うことになるでしょう。また、賄う必要があるのかという点については、そもそもどういう使途で借り入れをするのかという点に関わりますが、生活費、教育費ということであれば、その必要性は理解できますが、競馬、パチンコといったギャンブルであれば、そういった使途のために需要を賄う必要があるとはなかなか言えません。

ただ、実際に借り入れをする際に、ギャンブルのために借り入れをするとは普通言わないでしょうから、その見極めは非常に難しいでしょう。そういった場面では消費者金融などのノウハウというものが重要になってくるのかもしれません。このノウハウが活用できれば、銀行による個人向けローンが増える可能性はありますが、活用できないとなると今以上に増える可能性は低いでしょう。賄うことができるのかという点については、過去多くの損失を出している銀行としては、どこまでリスクを負えるのかという問題です。

この点について、考えられる可能性としては、大手銀行においては、顧客の選別が厳しくなり、返済の可能性が高い優良顧客については、低利でそれなりの金額を貸し付け、そうでない顧客については、利息制限法の上限金利に近い金利で少額を貸し付けるという形になるのではないでしょうか。また、低コストでの運営が可能なネット銀行においては、従来の消費者金融などの金利より大幅に金利を下げて貸し付けを行うことも考えられます。この面では顧客獲得競争が激しくなり、金利全般が下がる可能性もあります。ネット銀行の中には4%台で貸し付けを行っているところもあるようです。

総量規制の乗り切り方

すでに述べたように、貸金業者の利用者のうち約600万人が総量規制に抵触するとなると、こういった人々は、総量規制導入後は、貸金業者からの新たな借り入れはできなくなるわけですから、なんらかの対策を取らなければなりません。そこで私のこれまでの債務整理の経験から、考えられる対処法をこれからお伝えします。

①自分でやれるところは自分でやる
基本は給料で返済していくことになりますので、給料で返済できるよう、まずは生活費を見直してください。また、両親・兄妹・知人などから多少協力してもらえないか、相談してみてください。勤務先からの会社貸し付けや、生命保険・かんぽなどの契約者貸し付けなども活用できます。事業主のなかで、セーフティ共済に加入している方であれば、一時貸付金を利用することもできます。こういった借り入れが困難な場合には、貸金業者と直接して金利の引き下げなどが可能か打診してみるのもよいかと思います。

自分で借金の金額を計算するという方法もあります。これは、貸金業者に直接取引履歴の開示を求め、自分で引直計算をするという方法です。貸金業者は、過去の取引についてはおおむね高金利で取引をしておりますので、改正貸金業法が実施されるより相当前から取引をしていたという場合、引直計算をして過払い金が生じていることがあります。引直計算の結果、残高が減る場合、その金額での返済を求めるということも考えられます。

②「総量規制の範囲外」を活用する
①の方法では対処ができない場合には、前項で述べました、「総量規制の範囲外」を積極的に活用してください。例えば、銀行・信用金庫といった貸金業者ではない機関から借りられるか問い合わせてみてもよいでしょう。貸金業者ではない機関には、日本政策金融公庫など政府系の金融機関も含みます。銀行などのなかには、改正貸金業法の実施に伴い、個人向けローンを強化しているところもありますので、事情をきちんと説明すれば、場合によっては、借り入れができる可能性もあります。ショッピング枠の現金化は、約款で規制されていることが多いので、お勧めできません。

借り手に有利な借り換え、借入残高を段階的に減少させる借り入れなども認められておりますので、こういった制度を利用することも考えられます。もっとも借り手に有利な借り換え、借入残高を段階的に減少させる借り入れについて、具体的にどういうものかはまだはっきりしていない部分もありますので、実際に利用する場合には慎重な判断が必要です。個人事業主については、「返済能力を超えない」範囲での借り入れとなっており、一律の基準がないので、それなりに説得力のある事業計画であれば、総量規制をある程度超えても借り入れができます。個人的には、過去に実績のある個人事業主については、相当程度借り入れることができるのではないかと思います。
 
③債務整理をする
以上の方法でも対処できない場合には、すでに述べましたように、弁護士等の専門家に相談して、任意整理、自己破産、個人再生といった債務整理を行うことになります。

銀行からの借り入れなどは総量規制の範囲外!

すでに述べましたように、総量規制とは、年収の3分の1以下でしか借り入れができないという規制です。これまでは、借り入れられる限度について、明確な基準がなく、借り手へ貸すか否かの判断が各貸金業者に委ねられていたため、貸出実績を競う各貸金業者は、返済が困難とわかっていてもあえて貸すようなこともあったのですが、今回の改正により、今後はそのようなことはできなくなりました。統計によれば、日本全国で貸金業者の利用者は1170万人おり、そのうちの51%(約600万人)が総量規制に抵触するといわれております。

こういった方々は、今後は少なくとも貸金業者から新たに借り入れすることはできませんので、給料等から返済をするか、それができないようでしたら、なんらかの整理をすることも考えなければならないのです。もっとも、総量規制により制限されるのは、貸金業者からの借り入れですので、貸金業者以外からの借り入れについては、次項に述べるように規制の対象外ですので、その点はご注意ください。このように総量規制は非常に大きな影響を及ぼす規制ですが、規制の範囲外のものも結構ありますので、注意が必要です。以降、順番にお話しします。

①今回の貸金業法で規制されるのはあくまで貸金業者からの借り入れです。ここで貸金業者とは、典型的には、消費者金融や信販会社、クレジットカード会社を指します。銀行、信用金庫などは貸金業者ではないのです。したがって、総量規制を超える場合でも、銀行などから借り入れをすることは法的には問題がないのです。もっとも総量規制を超えている方に銀行などが貸してくれるかはまた別の問題です。

②また、信販会社、クレジットカード会社は貸金業者ですが、クレジットカードでショッピングをする場合には、規制の範囲外です。したがって、キャッシングを利用すると総量規制を超える場合、キャッシングは利用できませんが、ショッピングであれば利用できるのです。この点を利用して、現在も「ショッピング枠の現金化」という形で広く融資が行われておりますが、今後も、当座の資金を工面するために「ショッピング枠の現金化」を利用する方がより一層増える可能性があります。

③その他、住宅ローンや自動車ローンも規制の範囲外です。これらは、生活するうえで重要な資産であり、また通常高額であり、これらを規制対象とするとほとんどの人がほかの借り入れができなくなるからです。

④株式等有価証券を担保とする借り入れ、不動産(自己の居宅を除く)を担保とする借り入れも総量規制の範囲外です。担保があるため、十分返済が見込めるからです。

⑤高額医療費、緊急の医療費についても総量規制とは関わらず認められます。

⑥借り手に有利な借り換え(金利を下げる等)、借入残高を段階的に減少させるための借り換えなども認められます。

⑦専業主婦などの場合には、自分に収入がなくとも配偶者と合わせて年収の3分の1の範囲内であれば借り入れが可能です。ただし、配偶者の同意が必要です。

⑧個人事業主についても、事業計画等を提出したうえで返済能力を超えない範囲で借り入れができます。

⑨法人も総量規制の範囲外です。

このように、意外にたくさんの「総量規制の範囲外」□がありますね。今後は、この「総量規制の範囲外」がどの程度広く利用されるかが注目されます。これらが、総量規制の抜け穴のように広範に利用され、「総量規制の意味がない!」という状態になるのか、逆にほとんど活用されず、ほとんどの借り手が、原則どおり年収の3分の1しか借りられないという状態になるのか、どちらになるのでしょうか。

改正貸金業法というつよい味方

平成22年6月18日、改正貸金業法が施行されました。これまでも貸金業法はたびたび改正されておりましたが、今回の改正はこれまでの改正の総仕上げというもので、実務に非常に大きな影響を及ぼす改正でした。改正の目的は、ズバリ、「多重債務者をなくす!」ことです。今回の規制の内容は、大まかに言って、①貸金業者への規制、②過剰貸し付けの規制、③金利の規制、④ヤミ金の規制、の4つに分かれます。

①貸金業者への規制というのは、貸金業者として登録するには、純資産額は5000万円以上なければならないようになったというものです。以前は、個人であれば300万円、法人であれば500万円あれば足りたのが、大幅に引き上げられました。これは、安易に貸金業者の登録を認めず、資本力のある業者のみ登録を認めることで、問題のある業者を排除することを目的としております。                              
②過剰貸し付けの規制というのは、いわゆる総量規制といわれるもので、原則として、収入の3分の1以下でしか、借り入れができないというものです。これは非常に大きな改正です。そして、貸金業者が収入の3分の1を超えるか否か判断できるように、指定信用情報機関制度が創設され、貸金業者が、借り手の全負債状況を把握できるようになりました。これまでも信用情報機関はありましたが、業界ごと(銀行業界、信販業界、消費者金融業界等)に情報を保管しており、必ずしも業界をまたいだ形で情報が管理されておりませんでした。このため、これまでは収入をはるかに超える借り入れが問題なく認められるということもよくありましたが、今回、全ての業界が一律で情報を把握できるようにすることで、収入の3分の1を超える借り入れができないようになりました。総量規制については、次項でも触れます。

③金利の規制とは、いわゆるグレーゾーンの廃止のことです。具体的には、出資法の金利が従前の29・2%から20%に変更されました。グレーゾーン金利については、新聞、テレビなどで見たり聞いたりしたことがある人も多いかと思います。このグレーゾーンについては、いわゆる過払い金として、現在、多くの人が返還を求めておりますが、今回の改正により、改正後の取引については、グレーゾーンが生じることはなくなるため、少なくとも改正後の取引については、過払い金というものは発生しなくなります。グレーゾーンについては、「グレーゾーン金利がなくなることの意味」でも触れます。

④ヤミ金の規制とは、ヤミ金に対する罰則が強化されたことを指し、具体的には、従前は懲役5年が最高刑であったのが懲役10年に引き上げられました。

恐ろしい「多重債務」というワナ

多重債務とは、複数の業者から借り入れをして、返済しきれない借金を抱えてしまうことをいいます。一度このような状態になると、弁護士等に頼んで整理をしない限り借金を整理することは非常に困難となります。最初は返済が可能であっても、常に金利が発生し続けるため、借金が減らず、何か突発的な支出が生じたときに、返済に行き詰まることが多いのです。多重債務になり、返済が遅れると、①家や職場で取り立ての電話が鳴り続けたり、督促状が送られてきたりします。また、②何か月か返済をしない状態が続くと、裁判を起こされ、その結果、給与が差し押さえられたり、不動産等の資産を押えられたりすることもあります。このような状態となると平穏な生活を送ることが困難となり、また家族が崩壊してしまうことすらありますので、早急に手を打つことが必要です。失ってから
では遅いのです!

多重債務となるパターンはおおむね同じです。まず、ある業者から借り入れをして、その返済を続けていきます。そのうち、ある段階で、その返済が苦しくなるときが来て、そのときに、ほかの業者から借りて返済をします。そうすると、そのときはしのげますが、今度はほかの業者についても返済が開始し、月々の返済が増えていきます。そして、再び返済が困難となったときに、また別の業者から借り入れて返済に充てることになります。その繰り返しにより、気が付いたら、月々の返済だけで何十万円になることもあるのです。実際に、複数の業者から借り入れをすると返済はどのようになるのか見てみましょう。例えば、ある業者から、50万円を金利18%で借り入れて、月々1万円返済していくとすると1年間で残元金がいくらくらい減るかというと、以下のようになるのです。

月々1万円返済していくとすると、1年後に、残元金は46万7364円になります。12万円返済して、3万円程度しか減らないのです!そして、このペースで返していくとすると、完済するのは平成27年11月のことで、それまでに支払う金額はなんと93万円ほどになります!仮に、もう2社から同じく50万円借り入れ、月々1万円で返済をしていくとすると、もう2社についても93万円ずつ返済することになるのです。おわかりのように、1社であれば、43万円で収まっていた金利が、3社になると129万円になるのです。収入がそれほど上がらない状況で、これだけの金利を支払い続けるのは大変だというのはわかりますよね。これが多重債務のからくりです。

「過払い金請求」に関するQ&A

・裁判を起こさなくても全額回収できますか。
一概には言えませんが、裁判前の交渉段階では、貸金業者は、何割か減額した金額しか提示してこないことが多いです。その場合、全額回収を目指すのであれば、訴訟を提起し、裁判において全額返還を目指し、逆に、全額回収しなくてもよいというのであれば、貸金業者の提示額前後で和解します。裁判外の交渉で解決する場合と裁判で解決する場合の有利不利については、前者の場合には、早く解決するメリットがある一方、金額がある程度減額されるデメリットがあり、後者の場合には、全額回収できる可能性が高いというメリットがある一方、貸金業者の対応如何では相当程度時間がかかるというデメリットがあります。また、裁判を起こしたとしても必ずこちらの主張が通るわけでもありません。

・裁判すれば全額回収できるのでしょうか。
取引に争いがない場合には全額回収できる可能性が高いです。取引に争いがあるなど、貸金業者がこちらの主張を全面的に争ってくる場合には、全額回収できない可能性があります。

・裁判の期間はどれくらいでしょうか。
裁判にもよりますが、取引に争いがない場合には、訴訟提起後、第1回期日前後で和解が成立することも多く、その場合、提訴してから2~3か月で終了します。取引に争いがあるなど貸金業者がそれなりの反論をしてくる場合には、半年から1年程度かかることもあります。また、第1審で終了しない場合には、第2審まで進むこともあります。

・過払い金に利息はつくのでしょうか。
年5%の利息がつきます。従来、年5%なのか年6%なのか争いがありましたが、近時最高裁判例が出た結果、実務上は年5%となりました。

・過払い金返還請求権の消滅時効は何年でしょうか。
10年です。

・過払い金返還請求権の消滅時効の起算点はいつからでしょうか。
従前争いがありましたが、近時最高裁判例は、基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては、特段の合意がない限り、同取引が終了した時点から進行すると判断しました。これにより、取引が継続している限り消滅時効は進行しないこととなり、債務者に有利になりました。

・すでに完済している場合でも過払いを取り戻せるのでしょうか。
時効消滅していない限り、取り戻せます。完済した場合には、債権者は、契約書原本を返還してくることが多いですが、その場合でも過払い金返還請求権を放棄したことにはならないので、法的に返還を求めることは可能です。

・推定計算とはなんでしょうか。
推定計算とは、取引の開始日がわからない場合、推定で引直計算をするというものです。例えば、昭和60年から取引を開始したけれども、業者からの開示は、平成5年2月1日以降しか開示がないという場合があります。この場合、業者の取引履歴の最初に記載されている残高を無視してO円として計算をするというものです。借り手からすると、通常、残高O円で計算したほうが、過払い額が高くなるので、裁判ではこのような推定計算により業者に請求しますが、当然業者はこの点を争ってきます。そこで業者には反証を求め、それができなければ、こちらの主張が認められる可能性が高くなり、反証できる場合には、業者の主張が認められる可能性が高くなるのです。推定計算は、取引期間が長い場合には、過払い金が多くなるため、顧客には有利な方法です。

・過払いの場合もブラックリストに載るのでしょうか。
銀行系及び信販系の貸金業者の場合、過払いについては、「完済」扱いとなっておりますので、通常の債務整理のような事故扱いにはなりません。他方、消費者金融系の貸金業者の場合、従前は、過払いについて、「契約見直し」扱いとされており、「完済」扱いではありませんでしたが、平成22年4月以降は「完済」扱いとされるようになりました。したがって、現在では、どの貸金業者でも事故扱いにはなりません。

・ある貸金業者と取引をしておりましたが、突然、その取引が別の貸金業者に譲渡されました。この場合、過払い金をどちらの貸金業者に請求すればよいのでしょうか。
直接の規定はなく、また裁判例も分かれており、どちらに請求すべきかは一概には言えません。通常、過払い金の返還を求める場合、その時点での貸金業者に請求することになるので、基本的には譲受人に対し返還請求を行い、裁判で争う場合には、譲受人に対し契約上の地位の移転である旨主張して過払い金の返還債務も承継した旨主張することになります。

賃金業者が法的整理したら、過払いはいくら戻ってくるのか

過去、いくつかの貸金業者が、法的整理をしておりますが、その際の過払い金の弁済率はケースによってだいぶ違います。最近の例は下記のような状況です。弁済率が違うのは、貸金業者によって、回収可能な資産がどの程度あるのか、どういうスポンサーがつくのか、過払い金請求権者がどれくらいいるのかなどが異なり、これらにより弁済できる金額が大きく異なるからです。現在、進行中のものとしましては、SFCG(破産)、武富士(会社更生)などがありますが、これらの弁済率ははたしていくらになるのでしょうか?

過払いはいつまで続くのでしょうか。こればかりは過去のグレーゾーン金利の取引がどの程度あるのかによりますので、それがわからないと過払いがどの程度続くかはわかりません。ただ、言えるのは、平成22年6月の法改正後の取引については、過払いが生じることはないということです。そうすると、今後は、過去のグレーゾーン金利の取引のまま現在及び将来も取引を続けていく場合には、その取引をやめない限り過払いは残っていることになります。その人が過払いに気付かずに取引をし続けた場合には、それこそ、その方が亡くなるまで、過払いは発生し続けることになります。

潜在的な過払いについては、10兆~30兆円あるといわれていますが、実際のところはよくわかっていません。あと数年は顕在化した状態で続くと思われますが、その後はほそぼそと続くような形になるのではないでしょうか。では借り手側としては、過払いについて、どのように対処したらよいのでしょうか。この点については、約定残高がある状態で整理をしてしまうと、いったんはブラックリストに載ってしまうという点をどう考えるのかということと関わってきます。

すなわち、もう自分は、カードは利用できなくともよいということでしたら、グレーゾーン金利での取引があることが確実な場合には、整理をすれば少なくとも借金の金額は減りますし、場合によっては過払いが発生する可能性もあります。したがって、今すぐ整理をしても問題ありません。逆に、グレーゾーン金利での取引はあるが、ブラックリストに「事故扱い」として載ってしまうのは困るという方は、とにかく完済するまで返済を続け、完済した段階で弁護士等から過払い金返還請求をしてもらうというやり方が望ましいでしょう。完済している場合には、すでに「完済」扱いですので、ブラックリストには「事故扱い」としては載らないからです。

過払い回収の最前線

今、過払いの回収現場はどうなっているのでしょうか。現在、多くの弁護士・司法書士が債務整理の一環として過払いの回収に携わっておりますが、業者の対応でいちばん目につくのはできるだけ支払いを引き延ばそうとする姿勢です。これは業者側からすれば資金繰りの問題などからやむをえないのかもしれませんが、回収する側からすれば非常に憤りを覚えるところです。業者側の引き延ばしの方法としては、①取引履歴の開示を遅らせる、②交渉を長引かせる、③飲めない回答をする、④裁判になると移送の申し立てをする、⑤裁判では、あまり意味のない主張を長々とする、などがあります。

①については、受任通知後いつの時点で取引履歴を開示するかは業者によりまちまちで、早いところは1~2週間で開示をしてきますが、遅いところは3か月くらいかかります。その間に時効完成してしまうような場合には非常に気をつけないといけません。②については、こちらが引直計算をして請求をすると、「担当がまだ決まっていない」、「検討中です」などと言って1~2か月くらい引き延ばされます。③については、返済額を1割以下としたり、返済日を半年後とか1年後とする業者も結構おります。④については、過払い金返還請求訴訟の管轄は、原則として、(ア)本人の住所地か、あるいは(イ)業者の本店所在地を管轄する裁判所なのですが、ほかの業者とあわせて裁判をする場合、まとめて東京地方裁判所に提訴することもあります。

例えば、ある業者Aについて、(ア)埼玉、(イ)大阪という場合、埼玉か大阪の裁判所に管轄があるのですが、ほかの業者Bの本店が東京という場合、まとめて東京地方裁判所に提訴することがあります。この場合、Aが争わなければ東京地方裁判所で裁判をすることに問題はないのですが、わざわざ管轄を争い、大阪への移送を申し立てたりしてくるのです。この申し立てがなされると、過払い金について争う前にどちらの裁判所で審理するかを決めることになり、これだけで2~3か月かかってしまうのです。⑤については、貸金業法改正の経緯であるとか、実務上結論が出ている論点について延々と主張を展開するなどしてくることがあります。大手貸金業者のなかには提訴すると毎回同じ主張を数十ページにもわたってしてくるところもあります。

こういった主張をされると、こちらも一応それに対して反論をしなければならないので、非常に時間がかかります。そういった主張ゝ反論を繰り返している間に半年くらい経過してしまうということもよくあります。では、裁判まで行ったとして、どこまで回収できるのでしょうか。大まかに言って、①判決前にほぽ全額支払ってくる業者、②判決後判決で認められた金額を支払ってくる業者、③判決後も支払ってこない業者、に分かれます。銀行などの傘下にあるような業者は、①あるいは②の対応を取ってくることが多いでしょう。独立系の業者や中小の業者は、よくて②、悪ければ③の対応をしてくることもあります。③の場合には、別途差し押さえの手続を取らなければならないのですが、どこに財産があるのかを調べるのは容易ではなく、最終的には少額で和解せざるをえないときもあります。

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